叡智か、エッチか。
HBは広告の企画・制作プロダクションです。代表・村田はコピーライターなので、会社名は「書くこと」にちなんだものがいいなあと思って「HB」という名前しました。
ご存じ、エンピツのHB。いつも当たり前のように身近にあって、ちょっと懐かしくて、気がつくとお尻を噛んでいたあのHBです。
HBの読み方は、「エイチ・ビー」と「エッチ・ビー」の二種類があります。どちらで発音してもまちがいではないのですが、響きとしては「エイチ・ビー」のほうがなにやらカッコよさげで、モテそうな気がします。心なしか前髪もサラサラです。
さらにエイチは、漢字をあてると「叡智(英知)」となり、「深遠な道理を悟りうるすぐれた才知」(広辞苑より)との意味を持ちますから、このいかにもプレゼン向きのダブルミーニングに諸手を挙げて「エイチ・ビー」を推したい。推すべきだ、と至極まっとうな職業意識が立ち上がり、わたしは司法書士の藤井先生から渡された登記申請書の読み仮名の欄に迷いなく「エイチ・ビー」と書こうとしてふと手が止まり、気がつくと「エッチ・ビー」と書いていた。
その瞬間、わが社はエッチになった。
かくして株式会社HBは、代表の意味不明な衝動により、「叡智」をかなぐり捨て、「エッチ」(性に関する言動が露骨でいやらしいさま。俗に、性交。広辞苑より)に走った。そのことによって誕生した会社です。
エッチだけに。
「君はなにか? 社長にもなって、またしても27歳の頃のように、そんなことを言うとるのか」。そう問い詰められれば、わたしはこう答えます。「関西人のDNAに由来する含羞と諧謔、また悪い意味での悪ふざけ精神が、叡智やらなんやら言って気取ろうとしている自意識をぶっ壊したくなったのだ」と。そして、こうも付け加えるでしょう。「エッチのほうが、なんか、かわいかったし」。
通り一遍の論理は、くつがえされるためにあるようです。コピーライティングなんて横文字で格好つけてますが、生きた人間が生きた人間のためにする表現ですから、時代の生々しい感情をつかまえていかに捌くかがその出来を左右します。いつだって、叡智とエッチのはざまに揺れる「ふつうの人」の想いに寄り添う仕事ができれば、本望です。わたしという一本のペンによって。
はじめまして、HBです。(あなたの好きな呼び方で)。
コピーライター・クリエイティブディレクター
村田武彦